本年度は原子間力顕微鏡(AFM)と共焦点顕微鏡の画像組み合わせ法を確立しT管系を中心にした細胞微細形態の観察を行った。細胞内は膜染色によりT一管を描出し細胞表面はAFMにより3次元構造を記録したのちAFM探針を共焦点顕微鏡で撮影するという独自の方法で位置決めを行うことにより2つの方法による画像を3次元的に重ね合わせることができた。この結果細胞膜の陥凹から始まるT管構造を明らかにすることができたばかりでなく蛍光抗体法による細胞骨格分子の観察とも組み合わせ細胞内の力学支持組織についての情報を得た。さらに浸透圧ショック法によりT管構造を破壊しその心筋興奮収縮連関における意義を明らかにするとともにAFMによる押し込み試験でT管を中心とした細胞内構造の力学的意義についても考察した。細胞外への微小応力負荷システムについては光ピンセットシステムを基に製作しX-Y方向ばかりでなくZ方向にも自由に捕捉位置を調節できる実験系を確立した。細胞膜の接着斑の主要な構成要素であるインテグリンに特異的に結合するRGDペプタイドを表面修飾したラテックスビーズにコートし細胞表面に結合した後光ピンセットを用いて膜に平行に牽引することに成功した。心筋細胞においては引っ張りに対する剛性は明らかな異方性を示し細胞長軸において高い剛性を示した。さらに細胞骨格の構成要素である微小管を脱重合することが知られているコルヒチンで細胞を処理したところこの剛性は低下した。ところが他の要素であるアクチンに対する処理は変化をもたらなかった。これらの物性と構造の関係について考察を進めている。
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