接着分子インテグリンに対する抗体を介して心筋細胞表面に固定した微小粒子を光ピンセットを用いて捕捉し操作することによってメカニカルストレスを膜タンパクに与えた。共焦点顕微鏡を用いて細胞内のカルシウム応答(カルシウムスパークの発生)を観察したところ細胞長軸方向、短軸応答の刺激に対しほぼ同等の発生頻度が記録された。先行研究では細胞長軸方向に配向する微小管を介してメカニカルストレスが伝達され筋小胞体からのカルシウムスパークが誘発されることが示唆されており短軸方向の刺激にも反応するという結果は予想に反するものであった。そこでメカニカルストレスが細胞内に伝達する様式を明らかにする目的で核を蛍光染色し(SYTO)長軸、短軸方向への引っ張りに対する位置変化を記録したところ核は引っ張りを加えた方向に関わらず常に長軸方向に移動することが分かった。さらに薬剤の処理により微小管、アクチンを脱重合した条件で同様の実験を行ったところ核の移動は減衰ないし消失した。これらの結果より接着分子に加えられたメカニカルストレスは細胞骨格を介して細胞内小器官に伝達されるが心筋細胞においては細胞骨格の構造が力を長軸方向に変えるように働いているという興味深い事実が 示唆された。マイクロインジェクションを活用して微細構造の詳細な観察を進める予定であったが現在のところ十分な成功率が得られておらず次年度も継続して進めることとなった。 モデル化についてはT-管を中心にしたカルシウム信号が代謝のシグナルとして有効に働くか否かについてミトコンドリアまでを含めたモデルを製作中である。
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