研究課題
平成20年度は、20年度までに設計試作した小児用遠心血液ポンプTinyPumpの抗血栓性並びに生体適合性の評価を目標に、体重10-15Kgの芝山羊を用いた急性から慢性実験を立ち上げた。先ず、慢性実験に先駆け、6時間の急性実験を3頭の芝山羊を用い行った。実験は、左側開胸下、脱血管(20Fr)を左心心尖部に挿入、送血管(18Fr管+6mm人工血管)を下行大動脈に吻合し、体外に置かれたTinyPumpに接続し、循環を開始した。急性実験群においては、動脈圧並びに中心静脈圧は、71+18mmHg(73+13mmHg、術前)、5+2mmHg(9+3mmHg、術前)を示した。平均ヘマトクリット値並びに遊離ヘモグロビン量は、夫々20%以上、5mg/dLを示した。乳酸値は、術後1時間でピークに達し、腎・肝機能は正常値を示した。24時間以内の3頭の芝山羊においては、TinyPumpによりpartialからtotal循環補助において、安定した循環動態が維持された。また、6日間生存した山羊(Fig 2)においては、遊離ヘモグロビン量は、術後3日間高値(30mg/dL)を示したが、その後正常値に戻った。この動物においては、術後3日ごろに出血傾向があり、ヘモグロビン量の低下、末梢循環不全等合併症が併発し、6日で中止した。術後の解剖においては、急性実験群では、インペラー中心部の軸受部に血栓を認めたので、軸受け部の改良を行ったが、4頭目、5頭目には改善がみられなかったので、6頭目24時間の実験では、軸受部の大幅な改善を行った結果、血栓形成は減少した。6日間生存した7頭目では、軸受け部のwash-out穴構造を除去し、シャフト径を大きくし、軸受け部の間隙を縮小することで、血栓形成、溶血は無くなった。今後、数値流体解析並びに流れの可視化実験を立ち上げ、軸受回りの流れ、せん断負荷等の解析を進め、最適な軸受形状について研究を進め、安定した生体適合性を実現する予定である。
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