研究概要 |
平成22年度の研究は、前年度の2週間の生存結果を進展させ、一か月の生存を目標に、ポンプシステム、手術手技並びに術後管理法の改良を加えた。対象動物は、前年度同様に体重10-15Kgの生後約一年の芝ヤギ雄を用い、ガス麻酔下、左側第6肋間開胸し、脱血管を左心室心尖部に挿入、送血管を下行大動脈に吻合して、体外に置かれたTinyPumpに繋ぎ、覚醒させ、術後管理を行った。主な、ポンプシステムの改善は、1)インペラー中心部のベアリング部、2)ポンプ内の流体隙間、3)径方向磁気カプリング力の強化、4)ベアリング雄部の改良とボトムハウジングとの一体化、5)アルミ部材の使用とダイアモンドライクカーボンコーティング法の適用並びに6)ボトムハウジング強度の改善等を行った。中でも、インペラー中心部において、回転を支持するベアリング形状並びの流体隙間について、径方向磁気カプリング力を強化すると共に3種類の流体隙間(50,100,150ミクロン)について赤血球破壊(溶血)並びに血栓形成に与える影響について検討した結果、150ミクロンの流体隙間が溶血並びに血栓形成に与える影響が少ないことが判明した。150ミクロンの流体隙間におけるポンプ内二次流れ量は、数値流体解析の結果、外部流れの約10%であることがわかった。また、径方向の磁気カプリング力を強化することで、回転数の増加とともに起こるインペラーの上昇を、回転数が毎分4000回転まで抑えることができることが判明し、動物実験に必要な毎分1.0リッターの流量を発生させるための回転数3000~3500回転においては上昇しない結果になった。5)のアルミ部材の使用は、磁気カプリングに影響を与えるために使用できないことが分かった。ポンプ周辺のデバイスである脱血管に関して、先端に側溝があるワイア補強されたMalleable管を用いることで安定した脱血が可能となった。術後管理法としては、ヘパリンの持続投与によりACTを180~220秒に維持する以外に、ワーファリンやアルピリンの経口投与を試みた。以上の改善を行った結果、3頭30日、2頭21,23日の生存が可能となり、30日間生存したヤギにおいては、ポンプ内血栓形成並びに重要臓器に梗塞を認めない、良好な結果を得た。現在、3ヶ月間の生存を目標に、ポンプ部材の射出成型による安定した製造方法の開発を進めている。
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