本研究では、体外から投与した磁性ナノ粒子が『がん』細胞に集積する性質を利用した『がん』の治療・診断統合システムの実現を目指している。本年度は、磁性ナノ粒子による分子イメージング (Magnetic particle imaging : MPI) における空間分解能・検出感度を改善するために、磁性ナノ粒子から検出される磁化信号の応答波形(磁化応答波形)に含まれる偶数次高調波成分が空間分解能の低下を招くことを明らかにし、これらの成分を減じる新たな画像再構成法を提案した。さらに、目的領域内外の磁性ナノ粒子から検出される磁化応答波形の差異に基づき、磁化信号の干渉により生じる偽像を抑制する効果的な補正法を考案し、これらの画像再構成法により1mm以下の空間分解能が実現できることを数値解析、および、基礎実験により明らかにした。 一方、物体内部の加温分布を非侵襲に計測し温熱治療効果をリアルタイムにモニタするために、加温アプリケータ (空胴共振器) 内部の電磁波位相分布から温度分布を逆推定する画像再構成法の検討を行った。特に、再構成画像の空間分解能を時間領域差分 (Finite differ ence time domain : FDTD) 法により解析し、FDTD法におけるモデル (セル) 分解能以下で加温領域の検出が可能なことを明らかにした。しかし、より高精細に加温領域を画像化するためには、画像ボケを抑制する必要があること、ならびに、再構成された位相分布を高精度に温度情報に変換する新規アルゴリズムを考案する必要があることが示された。
|