本研究では、体外から投与した磁性ナノ粒子が『がん』細胞に集積する性質を利用した『がん』の治療・診断統合システムの実現を目指している。平成21年度は、磁性ナノ粒子による分子イメージング(Magnetic particle imaging : MPI)における再構成画像の画質向上を目的に、行列演算を用いた従来の画像再構成法に代わり、磁性ナノ粒子の分布を計測システムの特性関数との相関に基づき逆推定する新たなアルゴリズムを提案した。この手法では、画像再構成面において各点に仮想配置された磁性ナノ粒子の磁化応答特性を算出し、デコンボリューション処理を行う必要があるため再構成時間が長くなる問題があるものの、従来の画像再構成法に比べ安定した再構成画像が得られることが期待される。現在、数値モデルを用いた画像再構成シミュレーションを行っており、平成22年度に試作機による基礎実験を予定している。 一方、物体内部の加温分布を非侵襲に計測し温熱治療効果をリアルタイムにモニタするために、加温アプリケータ(空胴共振器)内部の電磁界位相情報から温度分布を逆推定する画像再構成法について、試作機を用いた評価を行った。その結果、誘電率の異なるファントム(水、および、グリセリン)内部の電磁界(位相)分布を、光電界プローブを用いて収集した1次元投影データから逆推定できることを明らかにした。これにより、提案手法を用いて空間分解能約1cm、ならびに、ファントム内部の均一な温度分布を1℃以下の温度分解能で画像化できる可能性を示した。今後、生体内部の不均一な温度分布を推定するために、より高精度に位相分布から温度分布を換算するアルゴリズムを提案する。
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