研究概要 |
骨折治癒を促進し,早期離床・リハビリテーションを容易にすることは,骨粗鬆症を予防し,寝たきりや要介護のリスクを減らすために有効である.本研究初年度には,骨欠損部の修復過程や種々の治療効果について,マウスモデルを利用したインビボ観察に基づく評価を可能とするため,傾斜型インビボCTシステムを構築した.本システムは,現有のマイクロフォーカスX線透視装置(島津製作所SMX-1000)をベースとし,マウスが載る回転テーブルと駆動モータ,およびそのドライバとX線検出器を制御するコントローラからなる.また,回転テーブルにはマウスへのX線被爆を抑えるための鉛シールドを装着した.さらに,骨修復に伴う局所変化を抽出するため,経時的な3次元CTデータの位置合せ(イメージ・レジストレーション)に基づく画像解析アルゴリズムを完成させた. 本システムの有用性を確認するため,骨治癒において重要な役割を担う血管新生と再生骨を同時抽出する予備実験を行った.まず,全身麻酔下のマウスを回転テーブルの上に仰臥位で寝かせ,予め欠損部が作製された下腿遠位部をCTスキャンした.数日後,尾静脈よりヨード造影剤(Fenestra, ART社)を投与し,同条件で再度スキャンした.イメージ・レジストレーションによる画像位置合せの後,サブトラクションによって血管像および再生骨(繊維状骨)を抽出し,本法が有効であることを確認した. これに並行して,骨欠損直後の無負荷状態が骨治癒に与える影響を調べるため,尾部懸垂モデルを対象とした放射光CT計測も行った.尾部懸垂によって骨への負荷が軽減された状態では,欠損部への血管新生が抑制され,骨の再生も遅延することが確認されている.
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