研究概要 |
本年度は,ジルコニア・ナノ粒子を利用した血管造影鋳型剤を新たに開発し,単色放射光サブトラクションμCTによって骨修復早期の血管新生と再生骨イメージを同一の非脱灰サンプルから取得する手法を確立した.再生骨については,その微細形態解析に加え,骨ミネラル評価も可能である.本手法によって,骨への力学的負荷の有無,およびβ交感神経遮断が骨再生および血管新生に及ぼす影響を評価した. 脛骨皮質骨にドリルホール欠損を作製したラット(12週齢♀)を通常飼育群(n=10)と尾部懸垂による除負荷群(n=10)に分け,術後,5日目あるいは10日目に腹部大動脈より血管鋳型剤を投与し,冷水下でこれをゲル化,脛骨術部を摘出・エタノール固定した.試料は放射光施設SPring-8にて,ジルコニアk吸収端の直上(18.1keV)および直下(17.9keV)でCTスキャン(分解能2.74μm)した. 各々の再構成イメージについて相互情報量の最大化によるレジストレーションを行った後,画像差分した結果,欠損部の再生骨と血管新生は明確に分離され,本手法が骨-血管形成連関解析における有用な手法であることが示された. また,欠損作成後5日目には両群とも血管新生が誘導されたが,除負荷群では血管新生は抑制される傾向を示し,骨再生は通常飼育群のみで認められた.10日後,再生骨量,ミネラル密度とも除負荷群で有意に低値を示した.さらに,β交感神経遮断の効果を尾部懸垂モデルで検討した結果,骨への負荷軽減による骨再生抑制は,β交感神経遮断により若干改善されたものの,通常飼育した欠損モデルの骨再生レベルまでには至らなかった.
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