本研究では、これまで開発してきた、ペプチドと高分子のコンジュゲートを利用した、細胞内シグナルに応答して遺伝子発現を活性化できる分子システムを利用して、がん細胞で特異的に亢進する細胞内シグナルに応答するシステムを構築し、これによりレポーター遺伝子をがん細胞特異的に発現させることの可能な分子システムを開発することを目的としている。20年度は、多くのがん細胞で異常亢進しているシグナルとして、プロテインキナーゼCα、Srcに関して、遺伝子制御ポリマーの開発を行った。プロテインキナーゼCα(PKC α)に特異的な新規に開発した基質Arphatomegaを用いて、PKC αに応答する遺伝子制御ポリマーを合成し、ペプチド導入率を挙げたところ、エレクトロポーレーションによらずとも、培養がん細胞に遺伝子を導入でき、実際に、PKC αに応じたレポーター遺伝子の発現を引き起こし、がん細胞のイメージングに成功した。また、担がんマウスにおいても、B16メラノーマを始め、ヌードマウスに移植した種々の人由来がん組織においても、顕著なレポーター遺伝子の発現を実現し、がん組織のイメージングが可能であった。この遺伝子制御システムを正常皮下組織に投与しても発現は認められず、また、制御剤ポリマー中の基質ペプチドのリン酸化部位であるセリンをアラニンに置換したネガティブコントロールポリマーでは、がん組織であっても遺伝子の発現を認めず、本概念による完全ながん特異的レポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)制御に成功した。Rhoキナーゼ特異的な基質の探索に関しては、前年度見出した配列を元に再設計し、ROCK2(Rhoキナーゼ)に対する優れた基質配列を見出した
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