平成21年度は、まず、プロテインキナーゼCα応答型遺伝子制御系を用いて、マウスのがんのみではなく、種々のヒト由来のがん細胞を移植した担がんマウスにより、がんの増殖活性のイメージングの手法を確立した。また、in vivoで用いるために、より遺伝子との複合体が凝集し、細胞での発現効率と標的キナーゼ応答性が優れた遺伝子制御剤の開発を目指し、主鎖がポリカチオン性の制御剤の開発を行った。得られた制御剤は、標的キナーゼが亢進している場合、従来型に比べ20倍の遺伝子発現を認め、従来、数倍であった標的シグナル応答性は、最大で500倍に改善した。そのメカニズムを検討したところ、エンドソームからの離脱能の向上が主たる原因であることが分かった。この制御剤では、新規な合成法を確立したため、ペプチドの導入率を自由に制御することも可能になった。また、制御剤にPEG鎖を導入して、遺伝子との複合体を安定化することにも成功した。これらの成果は、in vivoへの適用に重要なものである。また、遺伝子の代わりに蛍光標識したポリアニオンを用いて、キナーゼ活性の蛍光プローブシステムを開発することにも成功した。この場合、複合体形成時に、凝集に伴い蛍光が消光し、キナーゼによるリン酸化に伴う複合体の崩壊で、蛍光の回復を認めた。このシステムは、新規なキナーゼイメージング法として期待できる。さらに、癌診断に重要なキナーゼに対する新規基質の探索を独自に開発したペプチドアレイを用いて実施した。その結果、これまで存在しなかったALK、METなどに対する有効な基質ペプチドを見出すことにも成功した。
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