前年度開発した主鎖がポリカチオン型のプロテインキナーゼCα応答型遺伝子制御剤の主鎖の分子構造、及びペプチドの導入率を種々変化させて最適な構造を検討した。その結果、主鎖の分子量が大きい場合には遺伝子の抑制は問題ないが、リン酸化に伴う遺伝子発現の回復が弱くなる傾向があった。また、ペプチド導入率についてもある含量までは多いほどよいが、それ以上導入すると逆に遺伝子の抑制が悪くなる傾向が分かった。これは、ペプチドの導入が過剰になると、主鎖の柔軟性が低下し、遺伝子との絡み合いが悪くなることが原因であると考えられる。最適化したことで、シグナルによる遺伝子発現は、最大で1000倍にまで向上させることに成功した。PEG鎖の導入に関しても同様の理由で、導入率を上げすぎると遺伝子を抑制できないことが分かり、今後、導入サイトを最小限にしつつ、遺伝子との複合体の被覆率を上げる様な導入法の検討が必要であることが分かった。 キナーゼ蛍光プローブに関しては、前年度開発したプローブでは、細胞やin vivoに適用した場合複合体の安定性が不足しており、蛍光が回復したり細胞への導入が起こらないという問題が生じた。そこで、さらに安定な複合体を形成できる分子システムを構築するために、種々のポリイオンの組み合わせを検討し、デンドリマーに基質ペプチドと蛍光基を標識し、コンドロイチン硫酸に消光基を導入した組み合わせが最適であり、細胞への導入も可能であること見出した。
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