研究概要 |
生体の細胞外マトリックス(ECM)が有する組織修復能力を、ポリ乳酸性スキャホールドに付与するための新たな修飾方法を開発し、この技術を利用した生体吸収性神経誘導管を実現することを目的とする。機能性ペプチド配列の一つとして、ラミニンに多く含まれる、神経細胞の成熟化やアクソン成長などを亢進すると期待されているIKVAV配列に注目した。本研究では、(1)組織再生能力を有する機能性ペプチド配列によるポリ乳酸スキャホールドの新たな修飾法の開発、(2)このペプチドで修飾された神経誘導管の成形加工システムの開発と、in vitro, in vivo評価を進めた。 ポリ乳酸スキャホールドの強度低下を伴わずに修飾が可能な新方法として、オリゴ乳酸-機能性ペプチド配列結合両親媒性コンジュゲート修飾分子を開発した[特願2007-238434]。本コンジュゲートをポリ乳酸溶液に添加し、急速に成形加工できるエレクトロスピニング法により、ナノ繊維からなる神経誘導管を作成した。これらのナノファイバーマット上において、PC12やDRG細胞の活性化が確認された。 電界紡糸溶媒には、ポリ乳酸、および、ペプチドコンジュゲートの共溶媒であるヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用いた。内層には、IKVAVコンジュゲート入りの相を、その外層にはポリ乳酸/ポリエチレングリコール(PEG)の混合紡糸を行なうことで、強度と、神経再生活性を有する誘導間を作成した。ラット(Wisterrat、メス、8週齢、180-210g)左肢坐骨神経を10mm長切除、14mmのガイドチューブに神経末端を2mm挿入し両末端を縫合した。経時的な組織学的検討および電気生理学的検討の結果、修飾神経誘導管の優れた機能回復性が確認された。
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