研究概要 |
本研究では,遺伝子治療の対象に局所投与とEPR(Enhanced Permeability and Retention)効果が有効な「膀胱がん」と「肝がん」をそれぞれ選択し,以下の課題を目的にする.(1)長期発現治療用プラスミドDNAを内包する治療・標的ナノバブルを開発する.(2)試作するナノバブル衝撃圧制御装置を使用してナノバブルを破壊し,作製したプラスミドDNAを導入する.(3)超音波の腫瘍形態とナノバブルの移動軌跡から再構築された腫瘍新生血管の三次元的な構造変化で抗腫瘍効果の定量化をおこなう. 本年度は,これまで開発してきた液体とガスが同時に封入可能な音響性リポソームの形態を透過型電子顕微鏡で調べた.気液封入効率は20%であった.次に,液相リポソームの場合には,蛍光測定法からDNAへの封入効率は30%程度であることが示された.膀胱がん治療法の開発では,膀胱内をナノバブルと蛍光分子からなる混合溶液で満たし,内尿道口から膀胱尖に向けて超音波を照射し,膀胱尖部位への局所的な分子導入を目指した.蛍光分子は膀胱尖部位のみに導入され,その導入効率は超音波エネルギーに比例し増加した.同手法でルシフェラーゼ発現性プラスミドDNAも膀胱尖部位に導入することが可能であった.一方,肝転移治療では,ルシフェラーゼ発現性がん細胞を使用し,脾臓から肝臓する肝転移モデルの作製をおこなった.生体発光イメージング法および免疫染色法により,肝転移モデルの作製に成功したことを確認した.ナノバブルと高周波超音波を使用することで,肝臓内の血管像を抽出し,血管体積を評価した.腫瘍増殖に比例し腫瘍新生血管の体積の増加が示された.血管体積はがんの早期診断の指標になる可能性があることが示唆された.
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