研究課題
本研究では、腫瘍への線量集中、生物学的効果に優れた粒子線治療と、副作用が少なく腫瘍縮小効果の大きい腫瘍血管標的薬剤、および粒子線照射により薬剤投与を制御する放射線リリース型の抗癌剤内包マイクロカプセルのこれらの技術を相乗効果的に用いて、従来治療法に比べて低侵襲・高精度な化学粒子線癌治療法の開発を目的とする。今年度は研究計画初年度であり、本治療法を確立するために必要となる高精度粒子線照射の基礎技術開発を行った。具体的には、スポットビームスキャニング照射技術、2次元ビーム透過型位置敏感モニター、および陽子線照射で発生する熱音響パルス測定の各開発を行った。スポットビームスキャニング照射技術については、水平・垂直ビーム走査用電磁石とエネルギー可変用レンジシフターを用い、最大10cm直径の照射野及び最大20mmの拡大ブラッグピークを5%以下の線量一様性で形成した。これにより、マウス等の小動物を用いた粒子線治療の動物実験が実施可能となった。また、2次元ビーム透過型位置敏感モニターの開発を、マイクロパターンガス検出器の原理を採用して行った。加速器かちの陽子線ペンシルビームをモニターに直接透過させ、ビーム重心及び分布、ガス電離の電荷出力による照射線量を実時間でモニターすることに成功した。これにより、治療中の粒子線の位置、分布、線量を1つのビームモニターで実時間計測可能な基本技術を確立した。熱音響パルス測定では、陽子線パルスビームを水ファントムに照射し、水中に設置した広帯域超音波ハイドロフォンで熱音響パルスを測定した。パルスの発生位置をミリ単位で特定することは現段階で困難であったが、吸収線量と音圧の相関関係から、体内線量モニターとしての基本動作を確認した。
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Proceedings of the 16th Pacific Basin Nuclear Conference (16PBNC), Aomori, Japan, Oct. 13-18, 2008 1
ページ: P16P13781-6
International Journal of PIXE 18
ページ: 241-252