研究課題
本研究では、腫瘍への線量集中性に優れた粒子線治療と、副作用が少なく腫瘍縮小効果の大きい腫瘍血管標的薬AVE8062、または抗がん剤を併用することによって低線量・低副作用で高い治療効果を狙う化学粒子線癌治療法の開発を目的として、マウス腫瘍モデルによる単回治療実験を実施した。AVE8062(40mg/kg)を併用した陽子線治療(15または30Gy)では、治療後の腫瘍体積変化からそれぞれの単独治療に比べて腫瘍増殖が顕著に抑制され相加的な治療効果が確認された。また、白金系抗がん剤シスプラチン(10mg/kg)を併用した陽子線治療(15Gy)においても30Gyの大線量を付与する陽子線単独治療に匹敵する腫瘍増殖抑制効果が認められた。さらにマウスから腫瘍を摘出し、粒子誘起X線放射元素分析法によりシスプラチン由来の白金元素の腫瘍組織中における濃度および分布を評価した。その結果、白金濃度は2.6±0.3μg/gであり、腫瘍組織内に一様に分布しており、シスプラチンが腫瘍内に一様に伝達されていることが示唆された。一方、AVE8062併用陽子線治療後のマウスに対してFDG-PETスキャンおよびFMISO-PETスキャンを実施し、腫瘍の糖代謝と放射線抵抗性の低酸素細胞の残存状況を指標とした治療効果の分析を行った。FDG-PETでは腫瘍辺縁部に糖代謝が認められ、腫瘍中心部における糖代謝はほとんど無かった。また、FMISO-PETの結果においても、低酸素細胞が残存する領域はFDG集積が見られた腫瘍辺縁部の領域とほぼ一致していることが判明した。したがって、AVE8062併用陽子線治療では、陽子線照射により放射線感受性の高い有酸素細胞が殺傷され、さらにAVE8062で腫瘍中心部の広範囲な領域に壊死が誘発される一方で、腫瘍辺縁部の細胞は正常血管由来のわずかな酸素や栄養素の供給で残存する可能性が示唆された。
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巻: 未定 ページ: 掲載確定
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