研究概要 |
平成20年度は本研究に不可欠な高い特性X線強度を得るために一次重粒子(陽子)ビームの出力増強,専用ビーム輸送・集束・照射系の構築,及びその初期的な試験を行った.稼動開始後15年を経て性能が著しく低下していた既存のセシウムスパッタ負イオン源の部品交換と整備を行い,ビーム出力の増強を図った.まずスパッタリングによる負イオン発生に用いる一次セシウムビームを供給するセシウムアイオナイザーをサンドブラスト等により徹底的に洗浄して表面の付着物を除去し,一次セシウムビームの強度を倍増させた.また負水素イオンの発生源となる水素化チタン陰極の冷却に用いられるフレオンループのポンプを更新して冷却性能を向上させた.さらに陰極の位置,アイオナイザー,アインツェルレンズ等各構成要素の再アライメントを入念に行った.これらの結果,負水素イオンビーム電流を最大5μAまで復帰させることができた.これは前年度までの約10倍の強度であるが,目標の20μAには達しなかった.次に静電タンデム加速器にこの負水素イオンビームを入射し,陽子ビームとして3MeVまでの加速試験を行った.この結果,加速器出口のビーム電流を3μA程度まで増強することができた.並行して現有の真空部品や電磁石等を組み合わせて新しい専用ビームコースを建設し, X線発生用ターゲットの直前までのビーム輸送試験を行った.ビーム輸送・分析系の入念な最適化調整の結果,ターゲット直前の最大ビーム電流として約1μAを得た.このビームを試験的にガラスキャピラリーに入射して集束し,金属細線ターゲットに照射してビーム径の測定評価を行ったところ,少なくとも血管の高分解能静止画撮影に十分な強度を持つサブミリ級の微小準単色X線源が実現できることが分かった.
|