研究概要 |
本研究は,(1)多周波数の超音波を用いて,生体内部の画像に見られるスペックルノイズを軽減すること,(2)2周波クロスビーム方式を用いて,造影剤(マイクロバブル)の非線形振動をエコーから効率よく抽出し,肝臓等における低速血流を映像化することを目的とする.平成21年度においては,(1)多周波数の超音波を送受信するために多共振型圧電振動子を開発した.この振動子は厚さの異なる2つの圧電体を接着して,薄い圧電体の両端に設けた電極で駆動するもので,全体の厚みを半波長とする基本共振周波数の整数倍の周波数にピークを有する超音波を効率良く送受信できることを等価回路計算で確認した.圧電材料として1-3コンポジット材を用いて,2MHzと6MHzを基本共振周波数とする2つの圧電体を接着した振動子を試作した.6MHzの圧電体をインパルス電圧で駆動することによって1.5MHz,3.0MHz,4.5MHz,6.0MHzにピークのあるパルスを送受信できることを確認した.この振動子を超音波診断装置(アロカ社SSD1000)のメカニカルセクタプローブ(ASU-35CWD-2)内に組み込んだ.(2)2周波ビームの交差領域において和音成分のドプラシフト周波数と流速の関係を定式化した.流路ファントムを製作し,管内に市販の造影剤(ソナゾイド)を水とともに流し,流速とドプラシフト周波数との関係を実験によって確認した.超音波診断装置(東芝医用社SSA700A)から超音波送信の同期信号を取り出して,平面振動子(PZT)から送波された2MHzの超音波が,任意の位置および角度でコンベクスプローブ(PVT-375AT)による超音波ビームと交差するようにした.この2つの実験システムは,平成22年度に行われる,生体への負担を軽減する多周波超音波イメージングの検討を実施するために用いられる.
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