研究概要 |
上記課題は、超音波を併用した癌分子標的・血管新生阻害療法の臨床導入に向けての基礎的研究である。超音波エネルギーは放射線照射とは比較にならない程人体に優しく、悪性腫瘍を中心とした今後の治療手段としての適応拡大が推察される。本研究では、これまでの基礎研究における有用性を踏まえて、がん治療における超音波併用療法の臨床導入に向けての意義を早急に確立することを目的としたものと成る。低出力超音波エネルギーのソノポレーション作用を応用して、悪性度が高い腫瘍であるヒト子宮肉腫のヌードマウス移植モデルに対して血管新生阻害療法の併用実験を行ってきた。抗がん剤を少量且つ頻回に使用するメトロミック療法が期待される現状を鑑み、低出力超音波エネルギーを併用した新たな治療法は有用な治療戦略の一つと成りうると考えられた。血管新生阻害剤(フマジリン誘導体:TNP-470,thalidomide)もしくは制がん剤(5-FU誘導体、CPT-11)の低容量頻回投与と低出力超音波照射の併用は安全性も高く、がん治療に明らかな相乗効果をもたらすことを報告した(Emoto M, Cancer Sci 2009, Choijamts B, Emoto M, et al. Cancer Sci 2011)。これの効果により、がん治療薬の総投与量が有意に減量できうると考えられ、QOLの改善による治癒又は延命効果がもたらされると推察される。また、低出力超音波照射の強度や頻度等についても条件提示が出来るところまで絞りこむことが出来た(Choijamts B, Emoto M, et al. Cancer Sci 2011)。これらの研究成果は投稿した科学雑誌等に掲載された。
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