骨格筋に対する鍼通電刺激のインスリン抵抗性に及ぼす影響を検討する目的で、健常者を電気刺激群(大腿四頭筋の低周波鍼通電を中心に週2回)、運動療法群(エアロバイク20分を週3回)、運動療法と電気刺激の併用群の3群に分けて12週間の推移を検討した。評価は身体組成及び採血にて空腹時血糖値、血中インスリン値、血中レプチン値を測定し、インスリン抵抗性(HOMA-IR)、インスリン分泌能(HOMA-β)を算出した。その結果、インスリン値とインスリン抵抗性、インスリン分泌能は併用療法群において低下する傾向が認められ、レプチン値は運動療法群において低下する傾向が認められた。特に被験者の中でBMIが25以上の者は全ての測定項目において比較的高値をとる傾向で、介入前からインスリン抵抗性とレプチン値が高値であったが、インスリン抵抗性は併用療法群において低下する傾向が認められ、レプチン値は運動療法群において低下する傾向が認められた。 糖尿病予備軍に属さないもののインスリン抵抗性とレプチン抵抗性の強い軽度肥満者において低周波や運動療法により改善が認められたことから、インスリン抵抗性をリスクファクターと考えた場合、今まで疼痛緩和が主体であった低周波鍼電気刺激が、肥満や糖尿病の予防・改善について効果があるとのEBMの提示が可能となり、運動療法と共に糖尿病、肥満症など生活習慣病に対する治療手段の一つとして位置付ける基礎となることが期待できる。
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