研究課題
人工網膜は、カメラで捉えた画像データに基づいて網膜を電気刺激することにより視細胞変性疾患による失明患者に疑似光覚を発生させ視機能を回復させる人工感覚器である。現状の人工網膜は、視細胞変性後の残存網膜神経回路が正常に機能することを前提にしているが、最近、その変性初期から網膜回路に大規模なリモデリングが始まっている事を示唆する形態学的研究結果が報告されている。そこで、本研究は、我々が開発している脈絡膜上-経網膜刺激型(suprachoroidal-tranretinal electrical stimulation,STS)の人工網膜をリモデリングに対応させるために、網膜神経回路の機能特性が視細胞変性に伴ってどのように経時的に変化していくのかを解析し、網膜神経回路への電気刺激がこのリモデリングにどのような影響を与えるのかを検討する平成20年度は、まず、変性網膜における神経細胞の応答のin vitroイメージングの手法を検討した。健常ラットおよび視細胞変性ラットの眼球内に膜電位感受性色素あるいは細胞内Ca2+濃度指示薬を注入し、2時間後に網膜を摘出した。眼底観察から色素は硝子体内全体に広がっていたが、網膜の染色部位はごく一部にとどまっていた。そこで、眼球から摘出した網膜組織を、通気した培養液内で維持しながら、液中に膜電位感受性色素あるいは細胞内Ca2+濃度指示薬を添加した。添加1時間後の網膜を観察するとほぼ全体が染色されていた。この標本を神経線維層を上にして記録チャンバーに固定し、その表面に金属製刺激電極を設置して定電流矩形パルス刺激を加えたところ、脱分極性の応答が電極付近で発生するのを観察することができた。しかし、Ca濃度の変化は捉えることが出来なかったので、計測系の時間解像度と感度を改良する必要がある。
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