近年、経頭蓋磁気刺激(以下TMS)が脳卒中後遺症の治療目的で用いられている。特に、低頻度TMSを適用し、適用部位から対側大脳への大脳半球問抑制を軽減させ、結果的に非適用大脳の活動性を上昇させようとの考え方が注目されている。失語症患者に治療的TMSを導入する場合、言語機能を代償している部位をTMSに先立って機能的MRIで明らかにし、代償部位の対側(mirror region)に低頻度丁MSを適用することが望ましいと考えられる。よってこの考え方が正しいのかどうか検討をした。対象は、運動性失語を呈する脳卒中患者のうち、すでにプラトー状態にある患者4名。痙攣の既往がある患者、脳波検査で異常波が確認された患者は対象から除外した。対象に対して復唱課題による機能的MRIを施行、これで言語機能の主たる代償部位を判定し、そのmirror regionに低頻度TMSを適用した(1ヘルツ20分のセッションを1日2回で計10セッション)。TMS適用の前後で、SLTAなどによる言語機能評価を行い、治療により言語機能がいかに変化したかを検討した。患者並びに家族のVASの評価も行い満足度の評価も行った。機能的MRIの結果から、2名は右大脳半球に、2名は左大脳半球に低頻度TMSを適用した。全例に言語機能の改善を認め、患者並びに家族のVASの結果も改善を認めた。失語症患者に対して治療的にrTMSを用いる場合、施行に先立ってFM田で機能代償部位を診断することが有用であり、その結果に基づいて、代償部位への抑制を軽減させるよう低頻度rTMSを適用することで、言語機能の代償が促進される可能性が示唆された。
|