失語症患者に対して治療的にrTMSを用いる場合、施行に先立ってFMRIで機能代償部位を診断することが有用であり、その結果に基づいて、代償部位の対側大脳半球に低頻度rTMSを適用することで、言語機能の代償が促進されるとする報告が最近増えてきた。 低頻度rTMS治療を開始する時点において、通常の言語療法介入にもかかわらず、回復がプラトーになっている発症後15カ月以上経過した失語症を呈する患者20名を対象とした。復唱をタスクとしてfMRIをおこない、左右どちらの大脳半球が優位に失語症回復にかかわっているかを判断した。また、失語症のタイプを運動性優位もしくは感覚性優位であるかを診断した。磁気刺激の部位は下前頭回もしくは上側頭回とした。つまり、磁気刺激の部位を4か所の部位(失語症のタイプで下前頭回ないし上側頭回であるかを判断し、fMRIで左右を決めた)から選択した。11日間の入院期間中、10日間、低頻度rTMSを40分行い、そのあと60分の言語聴覚療法を施行した。言語評価は、短期評価と長期評価とし、入退院時と退院後1カ月で行った。11名の運動性優位の失語症患者において、有意差をもって重症度の是非にかかわらず言語機能は改善をしていた。9名の感覚性優位の失語症患者においては、中等度・軽度の患者においては言語機能の改善を認めたが、重症度が重度の患者においては、言語機能の変化はほとんどなかった。今後さらに長期的な経過における評価が必要と考えられるが、rTMSとfMRIを使用した磁気刺激部位の設定による磁気刺激療法と言語治療の組み合わせは、安全で効果があるものと考えられた。特に運動性失語を呈する失語症患者には有効であると考えられた。
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