研究計画2年目に相当する平成21年度はラット脊髄損傷に対するトレッドミルトレーニングの施行とその組織学的解析を行った。4週間のトレッドミルトレーニング施行群とコントロール群(自由歩行のみ)で脊髄内のシュワン細胞の分布を細胞マーカーであるp75を用いて解析した。しかしながら、両条件下でのシュワン細胞遊走に有意な差は検出されなかった。今後の検討課題として損傷強度を変えての実験の再試行、あるいは歩行訓練内容の変更が考えられる。また、今回マーカーに使用したp75はシュワン細胞が成熟すると発現が低下することが知られており、後根から遊走したシュワン細胞が脊髄内で分化した場合は同定できなくなる可能性も考えられた。この問題に対し、分化したシュワン細胞を同定できる抗PO抗体を導入した。しかし今のところ良好な染色条件が得られておらず今後検討を続ける予定である。また、別のアプローチとして脊髄内でのシュワン細胞の成熟度と運動トレーニングとの関連を別個の実験系で検証することを考え、シュワン細胞を損傷脊髄に移植する実験系を立ち上げた。移植細胞は遺伝子導入によって緑蛍光GFPを発現するよう調整され、ホスト脊髄の細胞からは明確に区別できる。移植の時期は損傷直後では細胞生着率が悪かったため、損傷後10日目の移植とした。今後、すでに染色条件が決まっている分化マーカーMBPを用いて移植細胞の成熟度を評価し、運動トレーニングによる変化を解析する予定である。
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