本研究の主目的は、仙骨部皮膚表面から第2~4後仙骨孔の脊髄神経を電気刺激する仙骨部表面電気刺激(ssES:sacral surface electrical stimulation)によって、子宮の収縮・蠕動運動や循環動態を制御し、仙骨部電気刺激が不妊症治療の一選択肢として適応可能かどうか検討することである。 前年度の研究結果をふまえ、排卵期において「形態」「動態」「血流」の解析を行い、難治性不妊症例における子宮の状態を確認した。同時に尿中プロスタグランジン濃度をELISAを用いて測定し、電気刺激が子宮の収縮に関与するとされるプロスタグランジンF2αに与える影響を検討した。さらに、本年度においては前年度までの体外受精は目的とせず、自然妊娠を主たる対象として検討した。すなわち、胚移植等高度かっ複雑な医療行為を行わずに、電気刺激によって簡便かつ自然に、難治性不妊症患者の妊娠が確立できるかを検討した。 これまでの我々の研究において、ssESは全月経周期で子宮の筋緊張を低下させ、蠕動運動の周期が約2倍に延長しかつ収縮強度が50%減少させることがわかっている。排卵期においてもこれまで同様、ssESによる子宮平滑筋の筋緊張低下が認められた。排卵期における子宮平滑筋の蠕動運動は月経期に比べかつ健常者に比して早い活動が記録されており、ssESにより緩徐になることが確認できた。PGF2αの尿中濃度に関しては、健常者同様排卵期に明らかな濃度上昇傾向を認めたが、ssESによる明らかな濃度低下は認められなかった。 電気刺激による自然妊娠確立の可能性は50%程度で概ね良好な結果であった。
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