今年度の実験ではラット坐骨神経を脛骨神経幹、総腓骨神経幹、大腿二頭筋枝の3本に分け、各々にフック電極を装着して電極同士が干渉し合わない方法を検討した。その結果、各神経を遠位に約10mm分離してフック電極間に厚さ2mmの絶縁体を挿入することで、各神経電位を独立して計測し得ることが明らかとなった。続いて大脳皮質の運動野を電気刺激して下行性の神経電位計測を試みたが、全身麻酔下では電流が末梢まで下行しないことが明らかとなり、半覚醒状態で辛うじて微弱な電位が計測されるにとどまった。また運動野からの神経電位が下行した場合、筋収縮による筋電も発生するため、フック電極が筋電位の影響を受けることも危惧された。このため3本の神経を三次元的に分離配置して留置し、一旦ラットを覚醒させて自発的な随意運動の神経電位を計測する方法をとることとし、各神経の電位を計測し得た。続いて各神経をさらに神経束に分離して各神経束の電位計測を試みたが、フック電極の大きさに限度があり微弱な神経束電位を計測するにはより微小なフック電極の開発が必要と考えられた。 以上によりラットの随意下肢運動中の運動神経電位の計測が可能となり、次年度はラット下肢ロボットを製作、上記の3種類の運動神経の電位をロボットのアクチュエーター制御に応用するシステム構築が主眼となる。昨年度から継続している本研究により、末梢神経電位による神経インターフェースが電動義手制御の多チャンネル化に大きく貢献し得ることが明らかとなった。
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