今年度はラットの坐骨神経を大腿二頭筋枝、脛骨神経、総腓骨神経の3つの神経束に分割し、各々の神経束にフック電極もしくは埋設電極を取り付け、ラットの下肢動作時の神経活動電位を計測した。その結果、各々の神経束から個別に活動電位を得ることができ、いずれも活動電位は2相性で、活動時間の値は大腿二頭筋枝が0.437(±0.330)秒、脛骨神経が0.475(±0.289)秒、総腓骨神経が0.401(±0.256)秒であり、最高電位の値は大腿二頭筋枝が295.29(±142.26)mV、脛骨神経が261.87(±194.86)mV、総腓骨神経が283.00(±107.40)mVであった。最低電位の値は大腿二頭筋枝が-240.00(±134.02)mV、脛骨神経が-299.37(±186.17)mV、総腓骨神経が-225.50(±164.12)mVであった。活動時間、最高電位、最低電位、電位差といったパラメータの値や周波数分布の特徴は類似していた。フック電極と埋設電極によって計測される活動電位を比較すると、計測される最高電位、最低電位、電位差の値に相違があるものの、活動時間や周波数分布の特徴から同様の活動電位を検出できた。活動電位は、大腿二頭筋枝、脛骨神経、総腓骨神経ともに類似の波形であり、足関節の屈伸はこれらの神経活動電位の位相差によって、拮抗筋の収縮・弛緩による協調運動が実現するものと考えられた。そのため坐骨神経を神経束に分離後、同一平面上に配置して各神経束に電極を装着することで、電位束ごとに異なる神経電位を感知することが可能であり、この方法で神経束電位による多チャンネル化が実現するものと考えられた。
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