高齢運転者の増加による事故多発の懸念があり、警察庁では高齢者講習や認知機能検査の導入などの対策を行なっている。しかし、車無しの生活が成り立たない地域もあり、運転断念の時期および断念後の生活設計をどうするかが重大な関心事である。本研究では、先行研究で得られたことをもとに、いくつかの対象地域で、長期間かつ多数のデータ収集及び解析を実施し、加齢や認知障害による運転能力の低下を検討し、運転断念の時期を明らかにし、断念後の生活をどうするかについて検討していく。 平成21年度は、前年に引き続き、群馬県みどり市(途中で教習所の廃業により中止)、福井県福井市、千葉県柏市の自治体や自動車教習所の協力により、高齢者講習における実車運転時のデータ収集を継続的に行った。それを用いて、高齢者の運転特性の分類を行い、また適性試験や反応速度などの出データと運転特性の関連を考察した。 次の項目としては、これまで改良を加えてきた簡易PCシミュレータを、福井県敦賀市の敦賀温泉病院のご協力で、物忘れ外来患者を対象にデータの収集を行った。それの分析から、認知症による能力低下が全般的に見られるものの、個々のケースごとに低下する内容が異なることが示され、認知症の問題の難しさがあらためて理解された。 もう一つの項目としては、前年度実施した福井県福井市・坂井市での大規模アンケートの分析を行いつつ、さらに詳細の情報を得るため、5つの地区で10名程度ずつのグループインタビューを実施し、日々の生活の状況や運転に関する不安等についての意見徴集を行った。地方地域での車依存の姿があらためて確認できた。さらに、福井県と対比をする意味で、千葉県柏市においても同様な大規模アンケートを実施した。住民基本台帳による無作為サンプリングをする関係から、市との調整が必要となり、実施が年度を越えて繰り越し対応となってしまったが、7月までに実施し、約1300名のデータを回収して解析を行っている。
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