本申請では、高齢ドライバの運転断念に着目し、そのなかでも軽度認知障害と運転能力の関係を確立することを第1の目標とした。また、運転断念は、その人の生活や地域に大きな影響を持つため、断念後の生活のあり方について、自治体・地域と共同でケーススタディを行い、今後の日本各地で想定されることへのモデルケースを構築することを第2の目標とした。 (1)各地域における高齢運転者のデータ収集と解析 福井と柏の自動車教習所で約2000件のドライビングレコーダで記録した映像・会話データを分析し、高齢ドライバが不安全な運転行動を起こす要因が、加齢による身体・認知機能の低下と不安全行動の抑制力の低下であることを明らかにした。また、注意バランスに関連する認知機能の低下は、意図せずに起こした不安全行動である「信号や標識の見落とし」の要因の一つであることを明らかにした。さらに、高齢者向け教育イベントを福井、柏にて実施し、高齢者の不安全行動に対する自覚を促す自己運転自覚教育システムの開発と通常の教育方法とを比較した結果、開発した教育システムの有効性が示された。さらに、道交法の改正により導入された高齢者講習の認知機能検査の数件の結果の分析を行った。 (2)高齢運転者の特性や能力を評価できる手法の適用 運転能力を簡単に計測可能なPCシミュレータを約100名の高齢者へ適用し、運転能力を評価する指標を開発した。また、認知症高齢者や認知障害のある高齢者約20名へ適用し、認知症の症状と運転能力の間には個人差があるものの、運転能力の一部が著しく低下する可能性があることを明らかにした。 (3)アンケート調査等により、地域の移動手段についての検討 福井と柏で実施したアンケート・グループインタビューの結果、運転断念に関する意識を分析し、また、運転断念後のモビリティ確保に向けた課題と超小型自動車の導入可能性についての提案を行った。
|