研究概要 |
本研究の最終目標である「家庭用の便器内蔵型光学式尿成分自動計測システム」の具現化に当り,今年度は妨害物質として尿素がグルコース濃度予測に及ぼす影響を調べるために,尿素濃度を任意に変えた混合溶液で濃度予測を行った.一方,グルコース以外の重要な尿成分としてアルブミンに着目し,これが同時予測可能かを併せて検討した.具体的には,グルコース(5~2000mg/dl:10種),アルブミン(5~300mg/dl:10種),尿素(500~2800mg/dl:10種)の3成分混合溶液を合計1000サンプル作成し,昨年度考案した方法,すなわちFT-IR型近赤外分光装置(現有設備)により得たスペクトルに対してケモメトリクスの一手法であるPLS法を適用することによりグルコース及びアルブミンの濃度予測を行った.その結果,グルコース濃度予測における平均予測誤差は60.4mg/dlとグルコース単一成分の結果より高値となり尿素濃度が予測精度に影響することが示唆された.一方,アルブミンの濃度予測については平均予測誤差:18.4mg/dlとなり,市販尿試験紙による半定量計測と同様の使用法を想定した場合には十分実用に供し得る精度を有しているが,定量計測を想定した場合には100mg/dl以下の低濃度での計測精度向上が必要なことが確認された. また実用システムへの移行を考慮してスペクトル計測用のセルに市販のフロースルー型セルを導入したプロトシステムを新たに試作しグルコース濃度予測の可能性を検討した.具体的にはOcean Optics社製のフローセル(光路長:10mm,セル容量:60μl,セル窓材質:UVグレードシリカ),光源(ハロゲンランプ,6.5watt),近赤外分光器(NIR512,スペクトル範囲:850~1700nm,波長分解能:約3nm)及び光フアイバを用いて水及びグルコース水溶液のスペクトルを各々計測し,その差分スペクトルに対してPLS法を適用することによりグルコース濃度予測モデルを構築した.その結果,平均予測誤差:49.0mg/dlという結果を得,フローセルを用いたプロトシステムにより尿糖計測が可能であることを確認した.
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