研究概要 |
最終年度である今年度は光学式尿成分分析システムの具現化に向けて以下に示す各項目を実施した. (1)妨害物質(尿素,NaCl)の影響除去:尿糖(尿中グルコース濃度)の計測精度に影響を及ぼす物質として尿中の尿素及びNaC1が確認され,この影響を除去するために両成分の吸光度変化の大きい波長(1008nm及び1335nm)を見出した.さらにこれら2波長にグルコースの吸光ピークである1637nmを加えた3波長の差分吸光度から,重回帰法により模擬尿中における各成分の濃度予測を行った.その結果,尿素・NaC1・グルコースの各成分に対して相関係数:0.997,0,986,0.812,標準予測誤差[mg/d1]:113.6,91.8,88.9という結果を得た,この知見を基に,次に示す「簡易光学システム」では当該3波長を中心波長とする光学的バンドパスフィルタ(BPF)を用いること,及び尿糖の計測精度向上を期待して長波長側のグルコース吸収ピーク波長(2120nm)を用いることとした. (2)光学的BPFを用いた簡易光学システムの開発:実用システムへ移行すべく,ハロゲンランプによる白色光を上記各波長のBPFにより分光し,試料溶液透過光を赤外センサ(P4638,浜松ホトニクス)で検出する「簡易光学システム」を構築した.2120nmのBPFを用いて各成分の単一水溶液の差分吸光度を計測したところ,各成分濃度との相関係数が尿素:1.000,NaC1:0.999,グルゴース:0.980と良好な直線相関が得られ本システムの妥当性を確認した. (3)尿成分計測用ダブルビーム型プロトタイプシステムの開発:上記知見を基に,簡易光学システムと尿サンプル採取・移送システムを統合した「プロトタイプトイレシステム」を開発した.光源には高出力のハロゲンランプ(20W)を用い,この光を2分岐ファイバによりリファレンス(水)及びサンプル(尿)を充填したフローセルにそれぞれ入射し,各々の透過光強度を上記赤外センサ(2個)を用いて計測する.このような「ダブルビーム方式」とすることで光源の変動や室温の変化などの外乱に対して頑強性の高いシステムとなっている.サンプル移送系の動作確認は終了し,現在各成分の計測精度を検証中である。
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