研究概要 |
1. ヒト運動関連野の皮質脳波解析 治療のため脳表電極を設置された脳神経外科患者の協力を得て、運動賦活時の運動関連野皮質電気活動(ECoG)を計測した。とくに皮質電位に注目し、運動前後1000msecの脳皮質電位(sMCP)解析対象とした。親指運動、握手、肘屈曲の3種類の運動をしたとき、1次運動野に設置された電極からのsMCP変動が統計的にも有意差が確認され、運動種類の判定に最も適していることが判った。さらに、Support Vector Machine (SVM)という数学手法を応用すると、sMCP時間経過の解読で、実際の運動直前においても86.6±5.8%の確率で患者がどの様な運動を企図しているかが予想できた。 2. ヒト言語関連野の皮質脳波解析 本研究では,3母音の黙読タスクについて,黙読母音をオフラインでSVMにより判別した。タスクの全試行数が少ないため,全電極のデータを判別に用いると過学習を起こす。そのため,電極一つずつの判別性能を評価し,カラーマップを作成した。その結果から,判別性能が高い電極の集団を選択し,それらの電極の全組み合わせにおける判別性能を改めて評価した。その結果、全被験者において,チャンスレベル(33%)を大きく超える、53-63%の判別性能を得た。 ヒトの企図の発現では、比較的同期的な電気活動を行う広い範囲の皮質領域と、企図判別性能が高い狭い皮質領域の存在が明らかになった。これは、運動企図の解析では一次運動野に相当し、言語企図の推定では、複数の独立性の高い言語関連領域、すなわち、運動性言語領域、舌・口の一次運動野、感覚性言語領域である。ヒトの高次脳機能がいかに発現するかは不明な点が多く、本研究によってこれを解き明かす革新的な成果が得られた。
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