研究概要 |
本研究は、ヒトの行動の組織化(ヒトがいかに活動し休息しているか)に関する普遍統計則(Nakamura, T., et al.Phys.Rev.Lett.99 : 138103, 2007)を切り口に、行動・運動異常をきたす精神・神経疾患を分類し、病態との関連からヒトの行動制御系について考察するとともに、同様の普遍統計則を持つモデル系の解析を通じて身体活動時系列の生成機序を明らかにしようとするものである。平成22年度は、下記の疾患の身体活動時系列と臨床情報を収集し、パラメータの偏位およびパラメータと臨床情報の関連の解析を中心に行った。季節性感情障害(大うつ病性障害、反復性、季節型;大うつエピソードの状態にあるもの)患者(N=14)の身体活動時系列から、活動期間、休息期間の持続時間の累積確率密度分布を得て、それぞれべき乗分布P(x>a)~a^(-γ)および伸張型指数分布P(x>a)~exp(-αa^β)にフィッティングし、べき指数γ、αおよびβを算出した。その結果健常対照群(N=11;γ=0.92±0.02,α=1.39±0.03,β=0.58±0.02)に対し、季節性感情障害群(γ=0.82±0.03,α=1.31±0.02,β=0.60±0.02)では有意にγが小かった。季節性感情障害では、非季節性の大うつ病性障害に比べて非定型うつ病の特徴(過眠、食欲亢進、神経過敏、鉛様麻痺)を示すことが多いとされ、行動の特徴も異なることが予想されたが、本解析の結果は、非季節性の大うつ病性障害群と同様の結果であり、本解析は非定型うつ病の特徴とされるものとは異なる側面を評価しているものと考えられた。
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