形態の違いは、競技特性を表す一つの指標であるが、幼少期からの長い経験年数が、その競技に適した身体形成を促していることが考えられる。特に水泳競技は、競技開始年齢が早い傾向にあり、幼少期からのトレーニングが身体形状の発育発達に影響することが考えられる。本年度の目的は、スイミングスクールに通う児童から成人の三次元人体計測を行い、その形態特性を明らかにすることであり、以下の2つに焦点をあてた。1)発育発達に伴う水抵抗に影響を及ぼすと考えられる身体パラメーターの相違を求める。2)競技力の違いと形態的身体パラメーター関係を求める。 幼稚園及び保育園児(男女)を対象に、三次元人体計測法(浜松ホトニクス社製)を用いて、長育(24箇所)、周育(12箇所)、幅育(2箇所)、全身体表面積、全身及び体分節体積を求めた。さらに重心高及び比重心高については床反力計を用いて、身体密度、体脂肪率、除脂肪量及び脂肪量については、空気置換法を用いて測定した。これらの測定項目より得られた結果から、個々のキネマティクス分析の為の体分節パラメーター(体分節質量、体分節質量比、体分節質量中心位置など)を算出し、同年代の児童や成人値と比較した。 その結果スイミングスクールに通う児童では、体幹部と発達が著しいことが特徴であり、そのことは成人の競泳選手にも共通して見られる特徴であった。つまり幼児期の水泳による身体的トレーニングは体幹部の骨格の発達を促す効果があることが期待される。一般的な身体計測以外に本研究のようなパラメーターを設定したり、その変化を調べることにより、子どもの身体運動による効果を客観的に評価することが期待できる。また縦断的な研究を積むことで、発育発達によって変化する形体及び運動の変化をより的確に捉えることが可能になると考えている。
|