積極的な健康増進、生活習慣病の予防と改善、そして介護予防の観点から、身体運動により筋機能(筋力)を維持増強する重要性が指摘されている。そこで本研究では、温熱刺激による骨格筋肥大の分子機構の全貌を解明し、効果的かつ効率的な骨格筋肥大法および加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)の予防・改善策を提示することで、スポーツ科学を飛躍的に発展させることを目的とする。本研究は4年計画で実施され、本年度はその2年目に当たる。マウス骨格筋におけるストレス応答において中心的な役割を担っている熱ショックファクター1(HSF1)を過剰発現たらびに欠損したマウスを用い、ヒラメ筋の量的変化を誘発するストレス応答の役割を追求し、HSF1の過剰発現により筋肥大効果が増強することが確認できた。 その際に、熱ショックタンパク質(HSPs)の中でも低分子量HSPの発現が増加した筋タンパク量を反映していた。また、HSF1欠損マウスでも荷重除去による筋萎縮後にreloadingすることで再成長することが確認されたが、その様態がwild typeと異なるものであった。さらに、アスタキサンチンにより酸化ストレスを除去すると熱ストレス負荷と同様に廃用性筋萎縮を抑制することが示され、さらにこの抑制は筋衛星細胞の量的維持を介したものであることが確認された。および以上より、温熱刺激による骨格筋肥大における「HSF1を介したストレス応答」の生理学的意義が順調に明らかにされつつある。今後さらに詳細な解析を進め、ストレス応答の骨格筋可塑性発現機構における意義についてさらに検討を進めていく予定である。
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