研究概要 |
一昨年度及び昨年度と同様に,4-メチルウンベリフェロン(MU)投与によるヒアルロン酸(HA)ノックダウンマウスの病理組織学解析を行った。その結果,重要な所見の一つとして,ヒアルロン酸合成酵素HAS-2の他にHAレセプターRHAMMの発現が著明に減少していることを新たに見出した。これまでMUはHAS-2のみに作用してHAの合成を抑制すると考えていたが,レセプターにも作用し,その後のシグナルも制御する機構が予想された。そこで,昨年度同様に,HAS-2遺伝子の発現抑制機構を各run-onアッセイ,ルシフェラーゼアッセイ法及びゲルシフトアッセイ法により更に詳細に解析した。2ヶ所のMUの応答配列を見出し,結合する転写因子を解析した。その結果,何れも既報の転写因子とは異なる挙動を示すタンパク質であった。平成23年度以降は,その構造,性質を解析する。またRHAMM遺伝子に関しては,MUで刺激した培養表皮角化細胞や生体表皮角化細胞では,発現がMU濃度及び反応時間に依存性に抑制した。しかもこの抑制機構も転写レベルで行われることが見出された。しかし,真皮線維芽細胞におけるRHAMM遺伝子は抑制を全く受けず,組織特異的な制御機構が存在していた。またもう一つのHAレセプターであるCD44の発現はMUによる影響を全く受けなかった。また,本マウスに各種サイズのHAを外用及び皮内注入し,老化症状が改善されるかを解析した。その結果,低分子のHAには全くアンチエイジング効果を認めなかった。しかし高分子HAにはアンチエイジング効果を認めた。しかしながら,その程度は非常に低いものであった。これまでの我々の研究から明らかになった様に,MUはHAS-2のみならずRHAMMやその他の多くの遺伝子発現にも影響するため,単なるHAの投与は本マウスの老化治療に直結しないことが考えられた。
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