研究課題
概日リズムが消失すると、様々な癌が起こりやすくなることが疫学データから示唆されているが、その分子メカニズムは十分に明らかになっていない。近年の研究から、細胞に発癌の危険性がある異常が生じると、細胞に備わっている発癌防御機構であるp53制御経路、p16^<INK4a>-RB制御経路が活性化されることが明らかになってきた。我々はマウスの生体内におけるp53制御経路、p16^<INK4a>-RB制御経路の活性をリアルタイムにイメージングできるシステムを開発した。本研究ではこのシステムを用いて、概日リズムの撹乱により、生体内のどこで、いつ、発癌の危険性が高まるのかを時空間的に解析し、概日リズムの撹乱により誘導される発癌リスクの分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。概日リズム、特に光で発現が制御されていると考えられているPer1はChk2を安定化させDNAダメージ抵抗性に関係することが示唆されており、Per1の高発現は癌抑制的に働くことも示されている。我々はこれまでに、化学発癌実験で発生した皮膚良性腫瘍においてCDKインヒビターのp16遺伝子の発現が上昇し、生体内においても癌抑制機構としての細胞老化誘導機構が働き、悪性転換を抑制していることを、p16遺伝子発現のイメージンングマウス(p16-BAC-lucマウス)を用いて示すことができた(Yamakoshi et al.J.Cell Biol.2009)。本研究では癌抑制的に働く概日リズム遺伝子のPer1とp16の協調的作用について調べるため、p16-BAC-lucマウスを用いて、生後まもなくから、12時間可視光線下で飼育し12時間消灯する通常の環境下(Light and Dark,LD群とする)で飼育する群と、出生時から暗い環境下で飼育するDD群に分け、現在、新生仔にDMBAを塗布する化学発癌系を用いて、概日リズムが消失するDD群で腫瘍を発症しやすくなるのかどうか解析中である。
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Cell Division 5
ページ: doi:10.1186
Journal of Cell Biology 186
ページ: 393-407