研究課題
概日リズムが消失すると、様々な癌が起こりやすくなることが疫学データから示唆されているが、その分子メカニズムは十分に明らかになっていない。本研究では、概日リズムの撹乱により発癌の危険性が高まるのかどうかについて解析し、概日リズムの撹乱により誘導される発癌リスクの分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。新生仔DMBA発癌系を用いて、12時間可視光線下で飼育し12時間消灯する通常の環境下(Light and Dark, LD群)で飼育する群と、出生時から暗い環境下で飼育するDD群(Dark and Dark)に分けて、発癌実験を行い、LD群、DD群間で発癌性に違いがあるかどうかを検討した。新生仔DMBA発癌系を用いると、30週齢時には雄雌とも100%のマウスで肺癌が発生し、雄マウスの場合はさらに肝癌も多く発生することが明らかになった。LD群の雄(n=6)では肝癌の発生個数の平均値は12.0個、DD群の雄(n=7)における肝癌の発生個数の平均値は12.14個で変わらなかった。一方、LD群の雄(n=6)における肺癌の発生個数の平均値は2.82個、DD群の雄(n=7)における肺癌の発生個数の平均値は8.29個でDD群の雄で肺癌が有意に多く発生した(p<0.05)。雌では肺癌しか発生しなかったが、LD群の雌(n=5)では肺癌の発生個数の平均値は4.4個、DD群の雄(n=12)における肝癌の発生個数の平均値は9.33個でDD群の雌で肺癌が有意に多く発生した(p<0.05)。以上の結果から出生時から暗い環境下で飼育したDD群(Dark and Dark)では新生仔DMBA発癌系により発生した肺癌が雄雌ともに有意に多く、雄では3.9倍、雌では2.1倍多く発生することが明らかになった。今後、癌抑制に働くとされているPeriod1、Period2等、様々なサーカディアン遺伝子の発現が、各々の群の腫瘍部、非腫瘍部でどのように変化しているか、また、p53経路、RB経路がサーカディアン遺伝子の発現とどのように関与しているかを解析したい。
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Cancer Research
巻: 70 ページ: 9381-9390