研究概要 |
大気圧非平衡プラズマ処理によるポリエステル繊維製品の親水化に関する基本的情報を得るために、気体源として空気、窒素およびアルゴンを用いてプラズマ処理を行い、表面のぬれ性変化をウィルヘルミー法により追跡した。ポリエチレンテレフタレートフィルムと繊維を用いて得られた結果は同様の傾向を示し、水の前進,後退接触角ともに未処理に較べて激減し、ぬれ性が増大することが明らかとなった.処理後の時間経過とともに接触角が増大するが、1週間程度でほぼ一定となり、このときの接触角は処理前の接触角より十分小さかった。接触角測定法により表面自由エネルギーを求めたところ、水素結合成分がプラズマ処理により著しく増大することが明らかとなった。とくに、窒素プラズマでぬれ性を表面自由エネルギーの増大が著しく、この原因を調べるため、処理前後のポリエチレンテレフタレート表面のX線光電子分光分析および原子間力顕微鏡観察を行ったところ、プラズマ処理により表面酸素濃度や表面粗さがかなり増大することがわかった。この傾向は窒素プラズマで最も著しく、ぬれ性の向上が大きかったこととよく対応する結果となった。 さらに、ポリエステル布のプラズマ処理を行ったところ、処理による布の力学的強度の変化や黄変は無視しうる程度であった。また、吸水性、洗浄性、染色性などの実用性能が向上し、窒素プラズマで最も効果があることが明らかとなった。実用性能の向上は、水素結合性の官能基の導入と表面粗さの増大に起因すると結論され、大気圧プラズマ処理の有効性が検証された。
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