研究概要 |
1. カリン果実から粗ポリフェノールを調製し,加熱加工をシミュレートしたモデル試験を行い,次の成果を得た。(1)カリンポリフェノールはカテキンの高重合体成分(プロシアニジン)が主体であり,有機酸存在下で加熱することによって低分子化し,2量体や単量体成分が増加した。この変化は有機酸の種類よりもモル濃度と関係していた。また,2量体成分の生成には2時間程度の加熱処理が有効と考えられた。(2)加熱処理時にカテキン単量体を添加すると,2量体成分の生成が顕著に促進された。 2. カリン果実から食物繊維成分に富むアルコール不溶性固形物を調製し,加熱加工をシミュレートしたモデル試験を行い,次の成果を得た。加熱処理1時間で不溶性ペクチンが減少し,水溶性ペクチンの増加が認められ,この変化は有機酸の存在下で促進された。また,ゲル濾過HPLCにより不溶性ペクチンの消失や水溶性ペクチンの低分子化が確認された。 3. カリンおよびマルメロ果実の加工適性を評価するために煮沸時軟化程度と食物繊維成分を調査し,次の成果を得た。(1)カリンとマルメロは両果実とも煮沸15分程度で軟化したが,カリンの方が変化が緩やかであった。(2)カリンはマルメロの約2倍の食物繊維を含んでおり,その差はリグニンとセルロース含量に基づくものであった。また,カリンのヘミセルロースは細胞壁と強固に結合したものが多かった。 以上のように,果実のポリフェノールやペクチン質の特徴およびそれらの変化を制御するための基礎的情報が得られたことから,これらの機能性成分を改変させた加工品製造の研究に応用できる。
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