研究概要 |
カリンやマルメロ果実を加熱加工する際,機能性成分に起こる変化を調査する目的で,カリンポリフェノールの加熱生成物を同定するとともに,果実の加熱加工品の品質や成分濃度に影響を及ぼす要因を調べた。 カリンの主要ポリフェノールであるプロシアニジンの加熱生成物を同定するため,2量体プロシアニジンの一種であるプロシアニジンB2を加熱処理したところ,有機酸の有無によって分解物の組成が異なり,クエン酸無添加では2量体の各種異性体が形成されたが,クエン酸存在下では構成ユニットであるエピカテキンとその異性体であるカテキンが顕著にみとめられた。また,クエン酸存在下の分解生成物の一つにシアニジンがみとめられ,これは加熱によりさらに低分子のプロトカテク酸,トリヒドロキシベンズアルデヒドその他の化合物に分解されることが見出された。このことから,カリンの加熱時にはカリンの有機酸存在下でプロシアニジンが加熱分解されることによって,シアニジンを介してプロトカテク酸やトリヒドロキシベンズアルデヒドが生じるものと考えられた。 また,カリンおよびマルメロ果実の加熱加工品の調製と製品の品質に及ぼす要因に関する調査では,果肉の煮汁のみを砂糖でゲル化させた「エキスゼリー」は,煮沸時間が長いほど粘度が高く,また,ポリフェノールおよびペクチン含量が多くなり,長時間の煮沸は機能性成分の抽出に効果的であることが明らかとなった。また,カリンゼリーはマルメロゼリーよりもポリフェノールが4~5倍多かった。一方,煮沸した果肉全体をペースト化して砂糖でゲル化させる「メンブリージョ」は,マルメロと同様にカリンでも調製可能であったが,仕上がりの品質に関わる赤色の色調が有機酸濃度に影響されることが明らかとなり,また,この色素の一部は不溶性ポリフェノールとして食物繊維に結合していることが分かった。
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