【目的】高齢化社会の現代において、認知症の発症率は高く、日本における発症者は約160万人と推定されている。その中で、アルツハイマー病は120万人を超え、急速に増加している。しかし、治療法や予防法が確立していないため、介護による経済的および人的負担が増大し、社会問題になっている。アルツハイマー病の病態として、アミロイド説が有力であり、アミロイド-βは神経毒性を示す。しかし、明らかな遺伝子変異を伴わないアルツハイマー病が90%以上であることから、アミロイド-β産生亢進に関与する分子機構の解明を目指した研究が、世界中で進められている。そこで、研究代表者らは、必須アミノ酸バランスの乱れにより、ストレス応答シグナルが活性化され、アミロイド-βの産生が亢進することを世界に先駆けて明らかにした(BBRC 2007)。 本研究では、この先行研究を発展させ、生体脳におけるアミノ酸バランスとアミロイド-β産生との関連性を解明し、新規の治療薬および予防法開発の基盤となる知見を得ることを目的とする。 【研究実績】 1.マウス脳の加齢におけるアミノ酸センサーシグナル分子とオートファジー関連タンパク質の発現の変化を明らかにした。 2.Food intake experiment:基礎餌(総タンパク質:コントロールの53%、必須アミノ酸:コントロールの32%)を与える。基礎餌からロイシンを除いた餌(LLD)を朝1時間食べさせる。その後、基礎餌に戻す。これを週1回繰り返し、現時点で1年以上施行した。 3.Food intake experimentを行い、体重および行動の変化を解析した。
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