本年度は主として、まず、数学的活動を促すためにそれをどのように組織化したらよいかについての基本枠組みを理論的に構成した。次いで、二つの方向、歴史をひもとき過去に学ぶこと(縦軸)と先進的な諸外国の動向や試みに学ぶこと(横軸)で、先行研究や事例を検討し、本研究の中核をなすアイデアを抽出し、構造化した。このため、以下の三つのことを中心に研究を実施した。 ア 2008年7月メキシコで開催された第11回国際数学教育者会議に出席し最近の動向を的確に把握するとともに、2009年3月オランダのフロイデンタール研究所主催の「数学A-limpiad」に参加したりイギリスの教育評価機構(QCA)を訪問したりして研究課題に関する情報を収集した。 イ 昭和10年代後半における数学教育再構成運動とその影響を受けて構想された中等学校用教科書「数学 第一類、第二類」による教育の思想及び内容について当時視野に入れられていた8年制義務教育構想における国民学校高等科用教科書「高等科算数一、二」(試案)及びその趣意書の分析も加え、国民が共通に学ぶべき学校数学について、他教科との関連も視野に入れて教材化の理念及び教育内容の構成原理について明らかにした。 ウ 昭和20年代の生活単元による教育で使用された教科書及びその依拠した学習指導要領(試案)を中心に問題場面や状況の設定の仕方や数学的な内容との関連の付け方などについて分析し、「生活」とのかかわりをどのように構想していたかを明らかにした。
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