研究概要 |
わが国を含めた主要国の理科関係教科目のカリキュラムに大さな影響を与えているPISAやTIMSSにおける学力の捉え方分析したところ,PISAでは義務教育を通して習得した「科学的表現」を行う能力を測定することが主要な課題となっている一方,TIMSSでは「知ること,応用すること,推論すること」という思考操作に基づいて,「情報を解釈する」,「科学的説明をする」,「証拠から結論を導くための推論をする」という新たな行動的目標の形式へと変化してきていることが明らかとなった。 TIMSS2007の地学領域の推論課題を対象に,子どもの記述内容について自己組織化マップを用いて分析を行ったところ,小学生は比較的科学的に正しい知識を構成しているが,課題に関連した経験やこれまでの学習を不適切に用いて推論する場合があり,課題の意図を把握する指導の必要性が考えられた。中学生は,科学的に妥当な知識構成もみられるが,構成された知識の一部を用いて推論する場合があり,関連した知識を組み立てて論理的に説明する指導の必要性が考えられた。 小学校理科教科書の疑問文の表現形式の特徴について分析を行ったところ, 1)学年や内容区分による偏りが大きいこと, 2)学年進行に伴い疑問文数が増加するというのではなく小学4年生の理科教科書に最も多くの疑問文が含まれていること, 3)名詞としての科学用語に関わる疑問文数は学年進行に伴って増えるが,副詞・形容詞を問う疑問文の割合は学年に伴いあまり変化しないこと が明らかになった。 次に,別の分類観点から,中学校理科教科書における疑問文を分析した。その結果, 1)「論述式」「理由説明」形式の疑問文が少ないこと, 2)「現象説明」「科学用語」の内容を問う疑問文が全体の約60%を占めていることがわかった。
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