大学などの研究グループにおける研究活動の真正な文脈で、Webリソースから学ぶことができるスキルの獲得・向上を支援する環境を構築することを目標に、本年度は以下の1〜4を行った。 1. 自己調節モデルの構築と認知ツールの開発:Webリソースから必要な情報を収集・再構成しながら研究活動に関連した知識を構築するプロセスでは、学習者自身が知識構築プロセスを調整すること(自己調整)が重要である。そこで、認知科学などにおける最新の研究成果を踏まえて自己調整モデルを構築し、自己調整のプロセスを具体化する認知ツールを開発した。 2. 学習スキル獲得支援メカニズムの開発:認知的徒弟制に基づき、自己調整スキル獲得のための4段階として、(1)自己調整プロセス観察支援、(2)自己調整遂行支援、(3)自己評価支援、(4)スキル適用支援、を実現するメカニズムを開発した。いずれの段階においても、学習者は認知ツールを用いて自己調整プロセスを遂行し、効果的にスキルアップを図ることができるようになっている。 3. 連携支援メカニズムの開発:認知ツールを利用した事例や認知ツールの操作履歴といった研究活動情報をデータベース化し、適切なタイミングで2の各支援メカニズムに提供することで真正な研究活動とスキル獲得支援を連携させる手法を検討・開発した。 4. 予備実験:研究活動に関連した様々なWebリソースを準備し、研究室内の大学生、大学院生に2の各支援メカニズムを利用させるケーススタディを実施した。その結果、自己調整プロセスおよびスキルアップに概ね良い効果が認められた。同時に、うまく機能しなかった場合を数え上げ、支援メカニズムの改良点について検討した。 近年、様々なコミュニティにおける真正な(authentic)活動の中で、Webを活用しながら学習を行う能力(学習スキル)が非常に重要となりつつある中で、真正な文脈との連携を考慮した学習スキルアップ支援手法を提供する本研究成果の意義は大きいと考えられる。なお、本年度の研究成果については、学習支援に関連する国際会議や国内での研究会で公表しており、今後学術雑誌でも公表する予定である。
|