研究概要 |
本研究では,人間の記憶力強化の新しい手法として,空間情報にかかわる人間の記憶特性を利用した容量拡大の方法論を構築することを目的としている.記銘強化法の原型は,古来の記憶術に見ることができるが,本開発の特徴は,携帯型コンピュータにより,場所(空間)やモノの特性を利用し,かつ視覚的な映像を動的に構成することによって従来の記憶術の利点を活かしつつ,日常活動の自然なきっかけでシステムを利用する中で意識せずに習熟し,誰でも容易に使用することが可能となる点である 本年の研究では,記憶掛けくぎの生成に続いて,記憶掛けくぎへの記憶対象の連合について評価を行った.記憶掛けくぎについては,ユーザが撮影した場所の写真に,画像としての特徴を含む順番がつけられた系列を合成させることにより,記憶保持と再生が強化される構成を構築した.順番がつけられた系列としては,・アラビア数字を図形化した系列,五十音の文字にモノの図形をつけた系列,および五十音で始まる人物の写真をつけた系列を用い,これらを画面に表示された写真の中に配置することにより,系列の再生が容易化することを確認した,さらに,ユーザによって作成された系列に対して,記銘する対象の画像を配置合成する手法を実験により評価した,その結果,記銘対象の順番を含めた正確な想起の割合は,1か月後の時点で,本研究での記銘強化をおこなった場合は85%,行わなかった場合は25%となり,明確な効果を有することが確認された 本研究では,実際の記憶学習局面において,開発した機能を利用可能とするため,デジタル教科書を対象とした構成をあらたに開発した.デジタル教科書として実際に販売されているページを用意し,その文章の中の指定された単語に関係する画像と,それに加える図形化数字に基づいた記銘の強化を行った結果,再生率が約6倍に改善されることが実験により明らかとなった
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