研究課題/領域番号 |
20300287
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
保立 道久 東京大学, 史料編纂所, 教授 (70092327)
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研究分担者 |
藤田 励夫 九州国立博物館, 学芸部・保存修復室, 室長 (00416554)
江前 敏晴 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (40203640)
永村 真 日本女子大学, 文学部, 教授 (40107470)
久留島 典子 東京大学, 史料編纂所, 教授 (70143534)
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キーワード | 純繊維紙 / 澱粉紙 / 製紙科学 / 和紙 / 修復 / 美濃紙 / 杉原紙 / 繊維配向性 |
研究概要 |
研究目的は、歴史学と製紙科学の両方の立場から和紙の材質の研究を深め、史料和紙の材質記録システムと紙質分類マニュアルを作成し、さらに和紙の制作技法と保存科学の研究にも資すことにある。昨年度に「和紙修復研究システム」の開発を基本的に終了したが、一定の改善とデータ蓄積を行い、とくに東大寺文書200点についてデータをそろえた。その中で、美濃紙の繊維間に膜があるという暫定所見をえた.またこれまで主観によって調査さていた光沢度・色L*A*Bについて光沢度計・測色計のデータを採取し、「和紙の紙質め基準的な計測方法(案)を作成した。なお東大寺文書について、面積・厚さ・密度・白色度・黄色度・光沢度・糸目幅・配向角度などの比較によって、澱粉紙(杉原)と柔細胞紙(美濃)の相互と内部小分類比較を行った。柔細胞紙を甲心に述べると、密度は高、糸目幅は大、表裏配向角度の差が大などとなる.また雑紙というべき小型で粗悪な生漉紙が平安期から地域紙として存在することを推定し、戦国期になって名称の登場する美濃紙とほぼ同質の紙が平安期から連続して存在し、とくに良質な紙が南北朝期にあることを確定した。 これをふまえ年末に和紙研究修復関係者のワークショップを開催し、上記を報告し、柔細胞は不慣れだと澱粉粒と見間違えるので、その見分け方についても議論し、「美濃紙」の繊維間に膜が存在することについて賛同の所見をえた。そして、その検討結果を確認するための和紙作成の発注を行うために予算繰り越しを行い、この膜が楮の柔細胞からなることを確定することができた.これによって和紙の分類表の大枠を(1)純繊維紙、(2)澱粉紙、(3)柔細胞紙、(4)雑紙という分類となる。
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