研究概要 |
古墳石室で分離されたカビと放線菌の6株にっいて、12時間捕集した揮発物質をSPME抽出し、ガスクロマトグラフ・質量分析計(GC/MS)でMVOCsを同定したところ、アルコール、アルデヒド、ケトンおよびテルペノイドの各種が、種特異的な組合せのパターンで検出された。さらに古墳石室から採取されたトビムシの体表から分離されたカビAspergillus fumigatusについては生活史との関連も調べたところ、目視できない培養初期(胞子の発芽と菌糸形成開始)には2-エチル-1-ヘキサノールが、カビ集落が認められ菌糸成長と胞子形成を開始している時期には、3-オクタノン、2-フェニル-2-プロパノール、2-メチル-5-(1-メチルエチル)-ピラジン、2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノンが、胞子成熟の時期にはヘプタナール、ベルガモテン、β-ピサボレンが発散されていた。MVOCsの抗真菌活性を調べるため、クロコウジカビ(A.niger)を用いたプレート検出法を開発した。この方法によって、これらMVOCsのうち、2-エチル-1-ヘキサノール、2-フェニル-2-プロパノールおよびヘプタナールには強い抗真菌活性が認められた。ベルガモテンはハチの1種Melittobia digitataのオスが放出する性フェロモンとして知られ、他のMVOCsに関しても性プェロモン、集合フェロモンあるいは警告フェロモンとしての活性の有無を検討する必要性が示唆された。 昆虫のカビに対する嗜好性を調べる実験系を開発した。飼育が容易で、無眼で叉状器が退化していて土壌の生活に適応しているシロトビムシ科のProtaphorura armataを材料として選択した。カビには古墳石室由来の、Penicillium brevicompactum(KC1株)、Bionectriaceae sp.(KC6株)、Aspergillus fumigatus(KTO176株)を用いた。容器の中でカビのない対照と共に、3種のカビを配置し、トビムシの行動をビデオ録画し、解析した。3種のカビのうち、KC1株とKC6株を比較的好む傾向があった。今後はオルファクトメーターを用いた実験によって、MVOCsとの関連を調べる必要性が示唆された。
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