研究課題/領域番号 |
20300290
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
馬場 悠男 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 名誉研究員 (90049221)
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研究分担者 |
松井 章 国立文化財機構奈良文化財研究所, 所長 (20157225)
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キーワード | 江戸時代 / 人骨 / 大奥 / 日本人 |
研究概要 |
平成23年度の研究実施計画としては、1)大奥人骨頭蓋骨のモデリングおよび計測ソフトウェアの開発、2)大奥人骨の全身CTスキャンの実施とデジタルデータ化、3)大奥人骨の人類学的な位置づけを行う、4)遺跡発掘報告書を作成する、の4項目であったが、いずれも完遂し、研究結果およびソフトウェアは吉川弘文館から出版された、「東叡山寛永寺 徳川将軍家御裏方霊廟」において提示した。大奥人骨の形態特徴としては、日本人の歴史において独特な位置づけがなされ、頭蓋骨は前の方ほど、下の方ほど華奢である傾向が明らかとなった。ミトコンドリアDNA分析の結果では現代の日本人にもみられるありふれた配列を示すが、歴史上の人物に古人骨DNA分析が適用された最初の事例となった。また、炭素・窒素同位体分析では、江戸庶民よりも魚貝類からのタンパク質をより多く摂取していたこと、鉛濃度測定では大奥人骨が非常に激しい鉛汚染にさらされていたことが直接的に示された。環境考古学的分析では、チョウジと思われる薬物やベニバナによる紅の使用が指摘され、さらに大奥人骨の内の3個体は寄生虫症に罹患していたことが指摘された。また、頭蓋骨のCTデータから作成した頭蓋骨のモデルをコンピュータ内で任意に計測できるソフトウェアを付属DVDとして配布した。実物の大奥人骨は荼毘に付され、現在は再埋葬されているため、標本の再利用は不可能な状態である。しかし、一般に公開する形ではないが、全身骨のCT画像および15個体の精密な頭蓋骨模型を国立科学博物館で保管し、これらは後世の研究者に利用できる状態である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
達成目的をすべて完遂させたため。
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今後の研究の推進方策 |
今回の大奥人骨から得られた知見を査読付きの雑誌論文として投稿する。
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