21年度は、毛付き牛生皮を原料とした膠を1種類、乾燥牛皮の膠を9種類、乾燥鹿皮の膠を1種類、オオニベの乾燥浮袋の魚膠を1種類、それぞれ試験生産した。毛付き牛生皮を原料とした膠は、アルカリ鹸化していない皮を煮込んだため、油脂分が邪魔をして膠成分が抽出しにくく、抽出液はなかなかゲル化せず乾燥は難しかった。乾燥した膠は粘度3.4ゼリー強度58であった。この試作により牛皮の前処理(アルカリ鹸化)の重要性を確認することができた。乾燥牛皮の膠と乾燥浮袋の魚膠は20年度の生産試験成果を基礎として生産試験を行い、抽出時間と温度をコントロールすることで求める性質の膠が生産できることを確認した。 21年度の生産研究により、日本画制作の絵具固着材、彩色の剥落止め処置材料、木材の接着剤、製墨などの各分野で有効に使える膠を工程管理に基づいて生産する基礎技術を確立できた。 今回試作した牛皮膠で各分野に有効な性質(粘度とゼリー強度)の膠は、絵具固着材は粘度8.0ゼリー強度234または7.6と259、剥落止めの強化処置材料は5.1と126、剥落止めの接着処置材料は9.4と306、製墨用は6.2と207または8.0と234であった。木材の接着剤は乾燥浮袋の魚膠が有効で、粘度7.9ゼリー強度187、油脂分量は2.45%で牛皮膠よりも多く含まれていた。また、試作した鹿皮膠は粘度7.6ゼリー強度164で、粘度が大きくゼリー強度の小さい膠を作ることができた。 文化財保存修復で使用する膠はpHが中性に近いことが望ましい。膠のpH調整技術、材料を開発したことも21年度の研究成果である。
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