研究概要 |
周氷河現象は気候指標として古環境復元等に利用されてきたが,従来の指標は,現成の周氷河地形・周氷河現象が分布する地域の気候値に基づいて,年平均気温や他の気候値の組み合わせで表わすという経験的で不正確なものであった.本研究では,世界各地に展開する周氷河地形変動の観測網から収集するデータとモデル実験結果を総合し,物理的な根拠に基づく高精度の気候指標を策定することを目的とする.具体的には,現成および化石形の周氷河現象の分布・規模・形態・構造に関する現地調査結果と,野外観測・室内実験から得られる周氷河現象が「動く時期や速度」と「動く条件(環境・地盤要因)」のデータを取得する.その結果に基づいて,各周氷河現象ごとに,分布条件(地温・地中水分・地盤物性値等で表される臨界値)を数値化するとともに,変動モデルを作成する.本研究は,研究代表者が代表を務める国際永久凍土学会の周氷河研究グループが推進する「気候指標の国際標準の策定に関する国際共同研究(2008〜2011年度)」の中核となるものである. 平成20年度は,スイスおよび日本アルプスの構造土とソリフラクション地形,アラスカの岩石氷河,北極圏スバルバールの構造土・ソリフラクション地形・岩石氷河を対象に,地形変動と環境条件(地温・水分・積雪等)や地盤条件の観測と地形の規模・形態・分布・内部構造の詳細な調査・観測を実施した.調査結果に基づいて,各地形の分布・規模・変動速度と温度条件の関係について調べた. 研究プロジェクトの構想について,アラスカ大学での国際永久凍土学会シンポジウムでの招待講演において発表し,海外研究協力者と今後の研究の進行について討論した.
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